vol.70 映画にみる色使いのこだわり

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みなさんは映画をよくご覧になりますか?
チケット代が高い、映画選びを失敗したくないなどありますが、TVドラマとは違い、監督の色・こだわりがよく見えるのは映画のよいところだと思っています。

今回は数多ある映画の中で色彩が印象深いものをセレクトしました。
個人的に劇場で「色が綺麗!」と感動した3作品の、色使いについてご紹介します。

 

色彩が印象深い映画


わたしが今回、色彩が印象深いと選んだ映画は以下の3つです。


ダンサー・イン・ザ・ダーク

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監督:ラース・フォン・トリアー
あらすじ:アメリカの片田舎。
チェコ移民のセルマは息子ジーンと2人暮らし。
つつましい暮らしだが、隣人たちの友情に包まれ、生きがいであるミュージカルを楽しむ幸せな日々。しかし彼女には悲しい秘密があった。
セルマは遺伝性の病で視力を失いつつあり、手術を受けない限りジーンも同じ運命を辿ることになるのだ……。

 

 ※「映画.com」から解説引用

eiga.com


アウトレイジ ビヨンド

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監督:北野武
あらすじ:北野武監督・主演で悪人同士の壮絶な権力争いを描いたバイオレンス映画「アウトレイジ」の続編。
関東最大の暴力団組織・山王会の抗争から5年。関東の頂点を極め、政治の世界に進出するなど過剰に勢力拡大を進める山王会に対し、組織の壊滅を図る警察が動き始める。
関西の雄ともいえる花菱会に目をつけた警察は、表向きは友好関係を保っている東西の巨大暴力団組織を対立させようと陰謀を企てる。
そんななか、以前の抗争中に獄中死したはずのヤクザ・大友が生きていたという事実が持ち出され、突然出所を告げられる。
前作から続投のビートたけし三浦友和加瀬亮中野英雄小日向文世らに加え、関西ヤクザ役で西田敏行塩見三省高橋克典、桐谷健太、新井浩文らが新たに参戦。

 

※「映画.com」から解説引用

eiga.com


ムーンライト

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監督:バリー・ジェンキンス
あらすじ:マイアミを舞台に自分の居場所とアイデンティティを模索する少年の成長を、少年期、ティーンエイジャー期、成人期の3つの時代構成で描き、第89回アカデミー賞で作品賞ほか、脚色賞、助演男優賞の3部門を受賞したヒューマンドラマ。
マイアミの貧困地域で暮らす内気な少年シャロンは、学校では「リトル(チビ)」と呼ばれていじめられ、家庭では麻薬常習者の母親ポーラから育児放棄されていた。そんなシャロンに優しく接してくれるのは、近所に住む麻薬ディーラーのフアン夫妻と、唯一の男友達であるケヴィンだけ。やがてシャロンは、ケヴィンに対して友情以上の思いを抱くようになるが、自分が暮らすコミュニティではこの感情が決して受け入れてもらえないことに気づき、誰にも思いを打ち明けられずにいた。
そんな中、ある事件が起こり……。
母親ポーラ役に「007」シリーズのナオミ・ハリス、麻薬ディーラーのフアン役にテレビドラマ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」のマハーシャラ・アリ
プロデューサーとしてアカデミー賞受賞作「それでも夜は明ける」も手がけたブラッド・ピットが製作総指揮。本作が長編2作目となるバリー・ジェンキンスがメガホンをとった。

 

※「映画.com」から解説引用

eiga.com


色使いのこだわり


ダンサー・イン・ザ・ダーク

この映画では主人公が現実を生きる映像と、しばしば空想するときのシーンがはっきり区別されています。

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色合いでみると、現実シーンはセピア色のように色褪せているのに対し、空想シーンでは彩度が高く明るく鮮明、空に浮かぶ雲まではっきり映されています。

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色だけに限らず、カメラワークも区別されています。
現実シーンではシーンの大部分は目の高さに設定されており、手持ちでブレのような感じがあり多少見えにくい印象があります。
空想シーンではカメラを固定、アングルはあおりや接写などがふんだんに使われていて、主人公の心の開放感などを感じることができます。

 

アウトレイジ ビヨンド

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北野監督の特徴として一番知られているのは、全体に青みがかった色合いです。
もともと余分な色を使うのを避けていた北野監督が、それ以降ブルーを意識して撮影されるようになったそうです。
ですが、2002年公開の日本映画「ドールズ」以降は、キタノブルーは強調されなくなっているようです。

 

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今回取り上げたアウトレイジ ビヨンドでも、ブルーが特別強い印象ではありませんでした。
この映画の特徴は、物語の内容、バイオレンスということも関係があると思いますが、全体的に中間色が暗いトーンとなっています。
だからといって、シャドウがものすごく濃いわけではなく、
役者さんの衣装、背広やネクタイなどは、暗がりに映える色となっています。
影に負けないような強い色というわけではなく、影の色と調和するように、かつ、そのものの色が映えるようなトーンにされています。

 

ムーンライト

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この映画は始まったときからハッとするほど映像が綺麗でした。
全体的に色がすごく綺麗で、太陽の光や木漏れ日、木の葉の緑、海の光など背景が輝くように透明感がまばゆい。
出てくる役者さんはほとんどが黒人の方です。
わたしも実際に写真の補正や映像の補正をするとき、肌の色が濃い人の補正はなかなか難しかった記憶があります。
でもこの映画では背景の透明感が抜群にあり、それでいて役者さん全員がとても美しく描かれています。

 

感情に沿って色が変わる


ダンサー・イン・ザ・ダーク

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この映画の主人公は、空想が好きな女性です。
その理由としては、現実では主人公は緊張や鬱屈、誰にも自分からは頼らない日々を過ごしていて、日常の中で気が紛れたり楽しんだりすることは、空想することしかなかったのではないでしょうか。
もしそれが自分だったならば、空想するよりも現実に虹や夕日を見て楽しんだりすると思います。

ただこの主人公は遺伝的な目の病気で、視力があまりなく物質的に"見る"よりも"空想して見る"方が主人公に合っているのだと思います。

現実シーンはセピア色のように色褪せてトーンも落ち着いているのに対し、空想シーンでは彩度が高く明るく鮮明に描かれています。
空想の中では、主人公は目も悪くなければ弱い存在でもなくて、まさに映像の色味と主人公の感情がリンクしているようにみえます。

 

色を足す


キタノブルー

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前述のように、北野監督は色彩面でこだわりを見せることで有名ですが、監督の特徴として一番知られているのは、全体に青みがかった色合いです。
この手法は非常に印象的で、世界的にキタノブルーと呼ばれています。
衣装や小道具などによく青が使われたりしていました。
また使われる道具に限らず、全体的にも青系を足しているそうです。

 

色を抜く

 

ムーンライト

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映像が綺麗なのは、撮影そのものの映像が綺麗だったのかと思いきや実は撮影された後にすべてデジタルで加工しているそうです。
木漏れ日や反射している光は、本物の光にするべく、光が反射している部分すべて、色を抜いて白く光らせているそうです。

色を抜くということはフィルムを透明にするような形で、投影している映像の光が観客に反射するようにできているそうです。
そのため、劇場でスクリーンを観ている人には直接スクリーンに反射した光が届いているため、抜群の透明感を見ることができるそう。

さらに黒人の役者さんがとてつもなく綺麗だったのは、実際に撮影時には存在しない青色を編集で足しているそうです。
キタノブルーとは違い、指定した色のみに色を足すという方法です。
そうすることによって、木漏れ日などの背景は透明感を保ったまま、人物も一番綺麗に見せることができています。

 

まとめ


いかがでしたでしょうか。 同じ映画を見るのでも、視点を変えるだけで違った印象が生まれます。
いろいろな色合いを肌で感じていると新しい発見が見つけられるかもしれません。

 

参考URL

 

miyearnzzlabo.com

 

eiga.com

 

ciatr.jp

 

HANA-BI - Wikipedia