vol.46夏の伝統色と文様
こんにちは。イラストレーターの西山です。
新緑の若葉の季節になりました。
仕事でも季節に合わせてデザインやイラストを作ることがあります。飲料やアパレル系のwebサイトを見ても春から夏らしい雰囲気になっています。
今回は夏をあらわす日本の伝統色や文様、夏にぴったりの配色をご紹介します。
夏にまつわる色、夏を感じさせる色とは?
日本では自然の色が伝統色に深く関係しています。夏といえばどんなイメージを想像しますか?
真夏の太陽に照らされたようなビビットな色だけではありません。暑さを避けるように涼しげな色を使うこともあります。
夏といっても「暑さ」「涼しさ」など印象が分かれます。
どちらも夏のイメージとしてぴったりですね。
次は夏の暑さや涼しさを色で表現する方法をご紹介します。
夏の暑さを感じる伝統色
夏の強い日差しによって、花など高い彩度の色はより鮮やかに見えます。夏の花や植物からとった色をご紹介します。
配色例
日本では重色(かさね色)という、衣装を重ねて着るときに季節の色を参考にしていました。
重色(かさね色)をそのままデザインの配色として使用するには色同士の彩度が強いため扱いづらい場合があります。
この場合は彩度対比の効果を考えて配色します。
彩度対比とは彩度の異なる色が影響しあい、色の鮮やかさが変わって見えることです。
彩度が高い色はより鮮やかになるのに対し、彩度が低い色はよりにぶくくすんで見える対比効果です。
彩度の高い色がよりはっきり見えるため、さし色などポイントで使用すると効果的です。
また、白を組み合わせることで夏の日差しを表現できます。
参考サイト
http://www.uttori-tottori.jp/#
「御菓子所 泉寿庵|株式会社 いづみや本舗」
涼しげな伝統色
暑いときほど冷たい海や水、強い日差しをさえぎる木など寒色をイメージしたりしませんか?
涼しげな色というと青色のイメージがありますよね。
その他に若竹色(わかたけいろ)や小鴨色(こがもいろ)を使った高原の夏を思わせる配色をご紹介します。
配色例
全体を寒色系にまとめて涼しさを出したり、白を加えて清潔で爽やかな印象になります。
参考サイト
飲料系のサイトでは涼しげな色をグラデーションさせて清涼感を出しています。
「冷やして愉しむ 夏の日本酒 「日本酒がうまい!」推進委員会」
http://www.ozeki.co.jp/reisyu/
「綾鷹(あやたか)」
写真から色を抽出する
夏に撮影した写真から色を抽出するのもよいかもしれません。 写真から抽出する際は実際にスポイトツールでとった色と、実際に目で見た色を比較すると 写真よりも彩度が高くなったり、同じ色に見えない場合があります。 その際は実際に目で見て調整します。
夏ならではの文様
夏の色と組み合わせて風物詩である文様)を一緒に配置すると夏らしさがさらに際立ちます。
今回は金魚など水辺の生き物の文様をご紹介します。
麻の葉文(あさのはもん)
麻の葉を連想することから名付けられた模様です。
まっすぐに伸び成長する縁起物として古くから親しまれ、現代でもwebサイトや商品のパッケージに多く使われています。
シンプルな幾何学文様で構成されており、着物のように全体に敷き詰めても落ち着いた印象を与えます。
「和果ごこち 日向夏サイダー」
https://www.dydo.co.jp/corporate/news/2015/150318.html
青海波(せいかいは)
自然の波を意匠化した文様です。
古くから雅楽の装束や工芸品に用いられる伝統的な文様です。
麻の葉紋と同じく幾何学的な文様は背景やちょっとしたアクセントとして使用できます。
「組子文様デザイン 青海波 日本伝統装飾|組子のタニハタ」
http://www.tanihata.co.jp/monyou/seikaiha.htm
金魚文(きんぎょもん)
模様としての歴史は浅いですが、華やかな姿が人気の高い文様です。
一匹だけでも作品にインパクトが出るだけでなく、流水や水草と合わせて涼しく見せられます。
Web Designing 2012年7月号
http://book.mynavi.jp/wd/2012/07.html
朝顔文(あさがおもん)
夏に咲く代表的な花です。浴衣や着物の文様として使われることが多く、暑さをしのぐアイテムや涼しげなデザインの中に使用されます。
「染の安坊 通販店(手ぬぐい 朝顔更紗 色)」
紫陽花文(あじさいもん)
紫陽花は雨のイメージを連想させ、涼しげな印象を与えます。
暑い日に用いるグッズの柄としても多く使われます。
「nugoo 【拭う 鎌倉】 本染め手拭いの通販ページ(あじさい小道 折りたたみ日傘)」
まとめ
いかがでしたでしょうか?
日本の身近な景色から生まれた伝統色だけに、季節の微妙な変化にも対応した色が揃っています。 浴衣や着物も季節のものを文様とともに表しているので、配色の参考になります。 また身近なものにも伝統色を使ったものが増えているため、伝統色を使ったデザインやイラストを作る楽しみが増えますね。
出典:ANA鳥取美人物語
出典:大阪のお土産は御菓子所 泉寿庵|株式会社 いづみや本舗
出典:冷やして愉しむ 夏の日本酒 「日本酒がうまい!」推進委員会
出典:組子文様デザイン 青海波 日本伝統装飾|組子のタニハタ
出典:染の安坊 通販店
参考:和の用語の全てを集約した総合着物辞書 - きもの用語大全
参考資料:伊達千代「配色デザイン見本張」
参考資料:佐野 敬彦「日本の配色